SOLUTION 解決
車載用FPCコネクタにおける加熱中のブリスター現象評価

車載用FPCコネクタにおける加熱中のブリスター現象評価

日々の生産工程で発生してしまう実装不良課題をケーススタディとして紹介。今回は材料メーカー様で起きた加熱中のブリスター現象に関する事例です。実装不良の起きている現象から課題、そして検証から解決策まで紹介しています。

INDEX 目次

1.自動車業界における電子部品の高性能化と高密度化

2.今回の実装検証ケース

  1. 2-1. ブリスター現象とは

3.原因の仮説

  1. 3-1. 原因①:樹脂の材料の配合量による影響
  2. 3-2. 原因②:樹脂形成時のガスによる影響
  3. 3-3. 原因③:樹脂のスキン層・コア層の違いによる影響

4. 今回の検証内容

5.検証結果と対策案について

1.自動車業界における電子部品の高性能化と高密度化

車載用FPCコネクタにおける加熱中のブリスター現象評価

近年、自動車業界ではEV(電気自動車)やADAS(先進運転支援システム)の普及が進み、電子部品の高性能化と高密度実装が求められています。これに伴い、車載用FPC(フレキシブルプリント回路)コネクタの役割も重要性を増しており、耐久性や信頼性の向上が不可欠となっています。特に、車載環境では高温多湿や急激な温度変化といった厳しい条件にさらされるため、製造工程における品質管理が極めて重要です。その中でも、リフロー工程中に発生するブリスター現象は、車載用FPCコネクタの品質を左右する重大な問題の一つです。ブリスターとは、加熱によって樹脂内部に蓄積されたガスや水分が膨張し、表面に膨れや剥離を引き起こす現象を指します。この現象が発生すると、コネクタの接続信頼性が低下し、長期使用時の故障リスクが高まります。今回はそんな車載用FPCコネクタで起きたブリスター現象の事例を紹介します。

2.今回の実装検証ケース

今回のケースはコネクタの樹脂メーカーで起こった事例です。車載用FPCコネクタの樹脂材料において、顧客側の量産ラインでリフロー加熱時に各所でブリスター現象(樹脂の膨れ)が発生。顧客の生産ラインの停止を余儀なくされ、原因特定と対策が早急に求められるという事態になってしまいました。

車載用FPCコネクタにおける加熱中のブリスター現象評価

2-1. ブリスター現象とは

コネクタの樹脂部に気泡や膨れが発生する現象を指します。主な原因は、リフロー工程での急激な温度上昇による樹脂内部の水分やガスの膨張です。吸湿した樹脂や何らかの理由で内部にガスが入った状態で加熱されると内部でそれらが膨張して樹脂表面にブリスターが生じます。

車載用FPCコネクタにおける加熱中のブリスター現象評価

3.原因の仮説

一般的にブリスター発生する原因のメカニズムは、以下の3つのパターンに分類されます。
またそれぞれのパターンで発生したブリスターには特徴があるので、どのパターンで発生しているかが分かれば原因を突き止められる可能性が高いです。

3-1. 原因①:樹脂の材料の配合量による影響

<発生メカニズム>
FPCコネクタなどの樹脂部品では、使用する材料の吸水率がブリスタ発生に影響を与えることがあります。特に、吸水率の高い樹脂(例:ナイロン、PBT)の配合量が変化すると、含まれる水分の気化温度や時間が変わり、リフロー時に内部圧力の差が生じやすくなります。吸水率の高い材料が多いと、水分が低温・短時間で気化しやすくなるため、樹脂内部に膨張した水蒸気が発生し、ブリスターの原因となります。一方、吸水率の低い材料を増やすと気化温度が上がり、圧力が抑えられるため、ブリスターの発生リスクが低減します。

<ブリスター現象の特徴>
・水分が原因のため材料の配合量によりブリスターが発生する温度や時間が変化する
・樹脂の面の部分で発生することが多い

3-2. 原因②:樹脂形成時のガスによる影響

<発生メカニズム>
樹脂成形時に空気が適切に抜けずに内部へ巻き込まれると、「巻込みガス」となり、後の加熱工程(リフローなど)で膨張し、ブリスターの原因となります。特に、流動性の高い樹脂や射出速度の速い成形条件では、ガス抜きが不十分になりやすく、空気が樹脂内部に閉じ込められやすくなります。また、金型のベント(通気口)が適切に設計されていない場合や、金型表面の摩耗・汚れにより通気が阻害されると、ガスの排出が困難になり、巻込みガスが発生しやすくなります。

<ブリスター現象の特徴>
・ガスが原因のため材料の配合量に関係なくブリスターが発生する温度が一定

3-3. 原因③:樹脂のスキン層・コア層の違いによる影響

<発生メカニズム>
樹脂成形品は、表面の「スキン層」と内部の「コア層」で構造が異なり、この層の違いが層間の密着性が低下し、層間剥離が発生することが原因でブリスターの発生に影響を与えることがあります。スキン層は急冷されて密度が高く、ガス透過性が低いため、内部のコア層に閉じ込められた水分や巻込みガスが外へ逃げにくくなります。特に、成形時の冷却速度が速すぎるとスキン層が厚くなり、内部に残った気体がリフロー時の加熱で膨張し、ブリスターの原因となります。

<ブリスター現象の特徴>
・樹脂の角やエッジの部分で発生する(熱の影響を受けやすいため)

4. 今回の検証内容

上記で記載したブリスターの発生パターンを特定するため、材料の配合量が異なる3種類の樹脂試験片を3つ用意(吸水率の違う材料の配合量が異なる)してリフロシミュレータで発生プロセスを観察。該当するパターンを判別する。

車載用FPCコネクタにおける加熱中のブリスター現象評価
車載用FPCコネクタにおける加熱中のブリスター現象評価

5.検証結果と対策案について

それぞれのブリスター現象の詳細動画や検証結果、及び対策案については以下の資料にまとめていますので是非ダウンロードしてご覧ください。

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