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はんだの濡れ性とその重要性

はんだの濡れ性とその重要性

はんだ付けは電子機器の製造において不可欠な工程であり、その品質は製品の信頼性に直結します。その中でも「濡れ性」は、はんだ付けの成功を左右する重要な要素です。濡れ性が不良だと、ボイドや未接合が発生し、最悪の場合、製品の不具合につながることもあります。今回はそんなはんだの濡れ性について基本概念や評価方法、改善策について紹介します

INDEX 目次

1.はんだの濡れ性の基本概念

2.濡れ性に影響を与える要因

  1. 2-1. 基板および端子の表面状態
  2. 2-2. フラックスの種類と性能
  3. 2-3. はんだの合金成分
  4. 2-4. 温度と加熱プロファイル

3.濡れ性の評価方法

  1. 3-1. 接触角測定
  2. 3-2. スプレッドテスト(広がり試験)
  3. 3-3. ウエッティングバランステスト

4.濡れ性改善のための対策

  1. 4-1. 基板表面の前処理
  2. 4-2. フラックスの適正化
  3. 4-3. はんだ合金の選定
  4. 4-4. 適切な加熱プロファイルの設定

5.まとめ

1.はんだの濡れ性の基本概念

はんだの濡れ性とその重要性

はんだの濡れ性は、液体はんだが基板や端子の表面に均一に広がる能力を指します。この濡れ性は、界面エネルギーと表面張力のバランスによって決定され、はんだと接合対象の材料との相互作用に大きく依存します。濡れ性の良し悪しは、接触角(ウェッティングアングル)によって評価されます。一般的に、接触角が小さいほど濡れ性が良好であり、はんだが基板表面に広がりやすいことを意味します。逆に、接触角が大きいと濡れ性が悪く、はんだがうまく拡がらないため、接合部の品質が低下する可能性があります。

2.濡れ性に影響を与える要因

はんだの濡れ性とその重要性

2-1. 基板および端子の表面状態

はんだが濡れる対象の表面が酸化していると、濡れ性が著しく低下します。そのため、端子表面の材質や表面処理が重要な要素となります。たとえば、金メッキや銀メッキは濡れ性が良好ですが、酸化が進んだ銅やニッケルでは濡れ性が低下する可能性があります。

2-2. フラックスの種類と性能

フラックスは、酸化物を除去し、はんだの濡れ性を向上させる役割を持ちます。適切なフラックスを選択し、十分に活性化させることで、濡れ性の向上が期待できます。

2-3. はんだの合金成分

はんだの合金成分も濡れ性に影響を与えます。例えば、スズ鉛は濡れ性が比較的良好ですが、鉛フリーはんだは鉛入りはんだに比べて濡れ性が低下しやすい傾向がありますが鉛の人体への影響を考慮するようになり、現在は鉛フリーが一般的となっています。

2-4. 温度と加熱プロファイル

適切な温度で加熱することで、はんだの粘度が低下し、基板表面に均一に広がりやすくなります。一方で、加熱が不十分だと濡れ性が低下し、逆に加熱しすぎると酸化が進んでしまう可能性があります。

3.濡れ性の評価方法

はんだの濡れ性とその重要性

3-1. 接触角測定

はんだと基板の接触角を測定することで、濡れ性を数値化できます。接触角が低いほど濡れ性が良好であることを示します。

3-2. スプレッドテスト(広がり試験)

固定された基板上にはんだを滴下し、加熱後の広がり面積を測定することで濡れ性を評価します。

3-3. ウエッティングバランステスト

はんだが基板に接触した際の浮力や引張力を測定し、濡れ性を評価する方法です。

4.濡れ性改善のための対策

はんだの濡れ性とその重要性

4-1. 基板表面の前処理

酸化物を除去し、適切な表面処理を行うことで濡れ性を向上させます。たとえば、酸洗いやプラズマ洗浄を利用すると効果的です。

4-2. フラックスの適正化

フラックスの活性度を調整し、適切な種類を選択することで濡れ性を改善できます。

4-3. はんだ合金の選定

使用するはんだの成分を適切に選定することで、濡れ性を向上させることができます。たとえば、微量のビスマスを添加することで濡れ性が改善される場合があります。

4-4. 適切な加熱プロファイルの設定

はんだが適切に広がるように、リフロー炉の温度プロファイルを最適化することも重要です。

5.まとめ

はんだの濡れ性は、電子機器の品質や信頼性を左右する重要な要素です。濡れ性を向上させるためには、基板や端子の表面処理、フラックスの選定、はんだの合金成分、温度プロファイルなど、さまざまな要因を適切に管理することが求められます。適切な評価方法を用いて濡れ性を測定し、継続的に改善を行うことで、高品質なはんだ付けを実現することができます。

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