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BGAにおけるコプラナリティとは?

BGAにおけるコプラナリティとは?

半導体の中で良く利用されるBGA(Ball Grid Array)のコプラナリティは、ハンダボールが多数あるため品質管理が難しい反面、従来のリード端子に比べ、端子数を増やしながら小型化を実現できるため、高密度実装が求められるデバイスに広く採用されています。今回はそんなBGAにおけるコプラナリティについて紹介します。

INDEX 目次

1. BGAにおけるコプラナリティとは

2. コプラナリティの品質不良が引き起こす問題

  1. 2-1. 接触不良
  2. 2-2. はんだ接合不良
  3. 2-3. 耐久性の低下

3. BGAのコプラナリティの測定方法

  1. 3-1. レーザー測定
  2. 3-2. 接触型プローブ
  3. 3-3. X線CTスキャン

4 . BGAのコプラナリティ課題の主な原因

  1. 4-1. 製造工程での要因
  2. 4-2. 設計上の要因
  3. 4-3. 材料の要因
  4. 4-4. 外的要因

5. まとめ

1. BGAにおけるコプラナリティとは

BGAにおけるコプラナリティとは?
BGAのコプラナリティは、すべてのボール端子が基板のランド(接続パッド)と同じ平面内に位置している度合いを示します。

■測定基準
最も高いボールと最も低いボールの高さ差。一般的には0.1~0.2mm以内が許容範囲とされます。

■理想的な状態
全ボールが基板と均一に接触し、均等な圧力ではんだ接続される状態です。

コプラナリティが不均衡だと一部のボールが基板と接触しなかったり、接触不良が発生する可能性があります。

2. コプラナリティの品質不良が引き起こす問題

BGAにおけるコプラナリティとは?

2-1. 接触不良

コプラナリティの不一致により、一部のボールが基板のランドと接触せず、電気的接続が確保できない状態が発生します。これにより、以下の問題が生じます。

・信号伝達の失敗
・電力供給の不安定化
・デバイス全体の動作不良

2-2. はんだ接合不良

コプラナリティの問題があると、はんだ付けの際に以下のような不良が発生します。

■はんだブリッジ
高さが揃っていないボール間に余分なはんだが流れ込むことで、ショートの原因となる。

■ボイド
はんだ付け部分に空隙ができることで、接合強度が低下する。

2-3. 耐久性の低下

接合不良や不均一なストレス分布は、以下の長期的な問題を引き起こします。

・熱ストレスや機械的ストレスによる早期劣化
・繰り返し動作中の接触不良

3. BGAのコプラナリティの測定方法

BGAにおけるコプラナリティとは?

3-1. レーザー測定

光学スキャンを使用して、各端子の高さを非接触で測定します。装置は対象部品をスキャンし、反射光を解析して高さを算出します。

■特徴
・精度:サブミクロンレベルの精密な測定が可能。
・スピード:非接触方式のため、短時間で広範囲をスキャン可能。
・適用範囲: 高ピン数の部品(BGA、LGAなど)や小型部品に最適。

■メリット
・非接触のため、部品を傷つけない。
・部品全体を一括で測定でき、効率的。

■デメリット
・表面の反射特性が測定結果に影響する場合がある。
・専用の装置が高価。

3-2. 接触型プローブ

測定対象の各端子にプローブを接触させて高さを測定します。プローブが物理的に接触することで正確な高さデータを得ます。

■特徴
・精度: ミクロンレベル高精度測定が可能。主に製品検査やサンプル解析に使用。

■メリット
・表面の反射や色に関係なく測定可能。
・シンプルな技術で、測定信頼性が高い。

■デメリット
・接触による表面損傷のリスクがある。
・測定スピードが遅く、大量の端子を持つ部品には不向き。

3-3. X線CTスキャン

X線を用いて内部構造をスキャンし、端子や接続部の高さや形状を解析します。BGAの内部はんだボールなど、直接測定が難しい箇所の検査に適しています。

■特徴
・非破壊検査:部品を分解せずに内部を可視化可能。
・高度な解析:ボールやパッドの正確な位置関係を3次元的に評価。

■メリット
・非破壊で測定が可能。
・内部接続不良やボイドの検出も可能。

■デメリット
・高価な装置と専門知識が必要。
・測定時間が長い場合がある。

4 . BGAのコプラナリティ課題の主な原因

BGAにおけるコプラナリティとは?

4-1. 製造工程での要因

①パッケージング時のボール形成不良
BGAのボールは、はんだ材料を溶融して形成されますが、以下の理由で均一性が損なわれることがあります。

・材料のばらつき:はんだペーストやボールの供給量が均一でない。
・熱プロファイルの不適切:リフロー工程での温度分布が不均一だと、ボールの高さが揃わない。
・表面張力の影響:各ボールの表面張力が異なると、収縮量が不均一になる。

②基板の反り
基板がリフロー工程中に加熱されると、熱膨張の差異によって反りが発生する場合があります。

・熱膨張係数の不一致:基板材料とBGAの材料の膨張特性が異なると反りが増加。
・多層基板の内部応力:多層構造の場合、製造中の積層工程で応力が蓄積され、加熱時に反りが発生することがある。反りによりBGA全体が平坦な接合面を維持できなくなり、コプラナリティが不均衡になる場合がある。

③ボール配置のずれ
・機械的精度の不足:BGAボールを配置する装置の精度が不十分だと、ボールの高さや位置が不揃いになる。
・粘着剤やフラックスの影響:ボール配置時に使用される粘着剤やフラックスが均一でないと、ボールが正しく固定されず高さのばらつきが発生する。

④リフロー工程での変形
リフロー炉内での温度上昇や冷却により、BGAパッケージ自体が微妙に変形することがあります。

・不均一な加熱/冷却: 温度プロファイルが適切でない場合、BGAや基板の局所的な膨張や収縮が発生。
・過剰な温度勾配:急激な温度変化がパッケージや基板にストレスを与え、変形の原因となる。

4-2. 設計上の要因

①パッケージ設計の問題
・ボールサイズの不一致:パッケージ設計段階でのばらつきがそのまま製造に反映される場合がある。
・ボールピッチが狭すぎる: 高密度設計では、小さなズレが全体のコプラナリティに影響を与える。

② 基板ランド設計の不良
基板側のランド(接続パッド)が正確に設計されていない場合、接続不良や高さのズレが発生します。
・ランド形状のばらつき:基板製造工程でランドの寸法や平坦性が不十分。
・ソルダーマスクの不均一: ソルダーマスクの厚みや位置が不揃いだと、ボールの接触状態に影響する。

4-3. 材料の要因

①不適切なはんだ材料
・合金組成の不均一:はんだボールの材料に異物が混入すると、溶融後の高さが不均一になる。
・フラックスの劣化:フラックスの性能が低下していると、はんだの濡れ性が悪化し、高さや形状に影響。

②基板材質の影響
・熱膨張の差:熱膨張係数が大きい基板材質を使用すると、リフロー中に基板の反りが大きくなる。
・湿気吸収:基板が湿気を吸収していると、リフロー中に膨張し反りの原因となる。

4-4. 外的要因

①振動や衝撃
製造ラインや輸送中に加わる振動や衝撃により、ボールやパッケージが変形する場合があります。

・搬送中のストレス:搬送装置の不適切な取り扱いが原因。
・落下事故: 取り扱いミスでパッケージに物理的な歪みが生じる。

②環境要因
・温度変化:急激な温度変化や過酷な環境下で使用されると、応力が蓄積し、時間とともに歪みが生じる。
・湿度:製造環境の湿度が高いと、部品や基板の膨張や変形を引き起こす可能性がある。

5. まとめ

BGAのコプラナリティ問題は、設計、製造、材料、環境などの多岐にわたる要因が絡み合って発生します。これを防ぐには、各工程での精密な管理が必要です。特に、リフロー工程での熱管理や、材料選定の段階での慎重な検討が重要です。また、製造後の検査で早期に問題を発見することも、製品の信頼性を向上させる鍵となります。

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