1.世界的な半導体不足について
現在世界的に半導体が不足しています。半導体はパソコンやスマートフォンをはじめとした様々な家電製品、自動車、また生活インフラまで、あらゆる所で使用されおり今や社会を維持するために必須なものとなっています。半導体が不足した原因として、新型コロナウイルスのパンデミックに伴い物流が停滞したことが半導体不足の原因と考えている方は多いかもしれませんが、パンデミックの他、AIやEVなどをはじめとした世界的な需要の拡大や国際情勢による流通変化も影響しており、今後も供給不足が継続する見込みとなっています。半導体を使用するセットメーカー各社は、半導体不足の対策として仕入れ先の拡大を図っている状況ですが、今回はそんな中で起きた実装不良のケースをご紹介します。
2.今回の半導体実装不良のケース
今回のケースはセットメーカーで起きた実装不良です。こちらのセットメーカーは通信モジュールに使用するBGA(ボールグリッドアレイ)が既存の仕入れ先だけでは足りないため、同一型番のBGAを新規の仕入先からも調達する事にしました。しかし、新規仕入先のBGAを使用開始後から、約30%の割合でオープン不良不良が発生するようになってしまいました。
■オープン不良とは■
はんだ接合部の不良現象。BGAのはんだボールと基板のランドが離れて接合されていないため導通不良を起こす。ハンダ凝固点でランドとハンダが接していない場合に発生する。
3.起きている現象
従来の仕入れ先から調達したBGAでは、特に問題は発生しておらず、新規仕入れ先を追加した後、不良品が発生するようになりました。このことから、新規仕入れ先に何らかの問題があると推測できます。しかし従来と同一型番のBGAにも関わらず、何故このような現象が起こるのでしょうか。
4.原因の仮説
今回の不良は同じ型番のBGAであるにも関わらず、新規仕入れ先のBGAでのみオープン不良が発生しました。BGAの製造元は同じであり、且つ既存仕入れ先では問題が無いことから、新規仕入れ先の保管環境に問題があると推測されます。またBGA製造メーカーは通常の使用時に想定される一定のストレスに対しては、不具合や故障のないよう設計・製造されていますが、移動や保管時には以下のような事項に注意する必要がある旨をマニュアルに記載している事が多いです。
4-1. オープン不良が起きるメカニズム
5.検証方法
吸湿によるパッケージの反りへの影響を検証するためには、通常のBGAと吸湿したBGAのパッケージの反り量の違いを比較する必要があります。そこで問題のなかった従来の仕入れ先のBGAを2つ用意して、通常のBGAと意図的に吸湿させたBGAのパッケージの反り量を測定します。また今回のオープン不良はリフロー工程で発生しているため、実際のリフロー工程と同じ加熱条件で測定する必要があります。そこで弊社製品の4DScanner2で測定し、通常・吸湿済みBGAのそれぞれのパッケージの反り量・傾向・タイミングを可視化して検証します。
5-1. パッケージの吸湿による反りのメカニズム
パッケージが吸湿すると反る原因は、湿気による加熱中の不均一な膨張とそれに伴う内部応力の発生にあります。パッケージの材料が水分を含んだ状態で加熱するとその箇所が熱により膨張。これが不均一に起こると、材料内部に応力が生じます。構造や特性、湿気の吸収状態により、反りの度合いや方向が変わることがありますが特に片面だけが湿気を吸収すると、吸湿した側が膨張し反対側が引っ張られるような力が働くため、反りが顕著になります。
6. 検証結果と対策案について
通常のBGAと吸湿したBGAそれぞれのパッケージの反りを計測を行った結果、反り量に大きな差異を確認できました。検証結果の詳細及び対策案については以下の資料にまとめていますので是非ダウンロードしてご覧ください。